洞窟の旧石器時代文化層からは幾つかの焼骨が出土しています。遺跡内に自然火災の痕跡が見当たらないので、焼骨の形成要因はヒトの活動に由来すると考えられます。これまでに見つかった焼骨はいずれも小さな断片で、通常の肉眼観察手法では動物種の同定が不可能でした。そこで、骨の内部構造が種により異なることを利用して、薄くスライスした焼骨2点を顕微鏡で観察し、ミクロ形態分析による種同定を試みました。「二次オステオン」と呼ばれる骨内部の円柱構造の大きさと骨質(緻密質)の厚さを形態計測的に検討した結果、焼骨試料2点はウサギ、もしくはテン・タヌキなどの小中型食肉類に該当する可能性が高いことが判明しました。ウサギと小中型食肉類はどちらも旧石器時代文化層から出土しており、特にウサギは出土動物群の主体をなす動物種です。焼骨の分析結果は、これらの動物が確かに旧石器時代人に利用されていたことを示しています。






