更新世の層準からはノウサギ属の歯を主体とする動物化石が出土しました。ナイフ形石器の周辺に集中的に出土し、焼骨も含むことから、それらの多くは旧石器時代人の猟果に由来すると考えられます。日本列島において、旧石器時代人の小型動物資源にかくも明確な証左が得られた先例はありません。彼らの狩猟活動についても、ともするとナウマンゾウやヤベオオツノジカといった絶滅大型獣の利用が強調されるきらいがあっただけに、当洞窟の調査成果は極めて大きな意義をもちます。ノウサギ属以外には、ムササビ、中型食肉目、カモシカ属、さらにはヒグマ、ヘラジカの歯も少数出土しました。洞窟を利用した旧石器時代人は小型獣から大型獣に至るまで多種多様な動物を利用していたようです。

1.ヒグマ 犬歯, 2.ヒグマ 右下顎第1後臼歯, 3.ヘラジカ 左上顎第2・第3後臼歯, 4.ムササビ 右上顎第2後臼歯,
5.ノウサギ属 左下顎第3前臼歯, 6.食肉目 左上顎犬歯, 7.カモシカ属 左下顎第一切歯, 8.ヘラジカ右下顎第3後臼歯