研究目的

表層地質の大半が酸性土壌で覆われている日本列島では、遺跡から動物遺体が出土することは稀です。しかしながら、日本有数の石灰岩地帯に位置する青森県東通村尻労安部洞窟からは、保存状態の良い旧石器時代・縄文時代の動物遺体が多数出土します。過去10年以上に及ぶ調査の結果、この洞窟からは既に国内初となる旧石器と動物化石の明確な共伴出土例も確認されるところとなり、更新世人類化石の発見にも期待が高まるに至っています。そこで、本研究ではこの尻労安部洞窟の発掘調査を継続し、考古学、形質人類学、古生物学、地質学ほか関連諸学の学際的調査・研究を展開するなか、本州北端における更新世人類集団の暮らしや来歴を多角的に解明することを目指します。

旧石器時代の石器
左、中:ナイフ形石器、右:トラピーズ
更新世層準より多出したノウサギ属の歯
一部ネズミ類の歯も含む
ナイフ形石器と更新世動物化石の分布